統計的有意性

 観察した標本グループ間に差があるという結果となった場合、常に偶然によ る差を考慮しなくてはなりません。統計的有意性 statistical significance と は、そのような差が本当のものか、単に偶然によるのかを判断する手がかりとな るものです。
 統計的有意性の検定では、まずグループ間に差がないという帰無仮説 null hypothesis ;Ho を強引に設定します。次に、この帰無仮説が正しくない、つまり「帰無 仮説を棄却する」ことを証明します。しかし、もし間違って正しい帰無仮説を棄 却してしまう危険性(これを「第1種の過誤」といいます。)があります。そこ でこの過誤が起こりうる可能性を確率(これを「有意水準」といいます)として 表現するのです。例えば、よく用いる有意水準 p=0.05 とは、1/20の確率で第 1種の過誤が起こるということです。この水準をどのくらい取るかでその差がよ り確定的になるともいえます。ただし、統計的にはこの誤差がおこる確率が決し て0 になることはありません。
 厳密にいうと、この有意水準は単に誤って帰無仮説を棄却してしまう確率で はなく、帰無仮説が真であるとしたら棄却してしまう確率をいいます。つまり、 その確率で帰無仮説が真であることを指しているのではなく、真であるという仮 定のもとに棄却してしまう確率です。もし帰無仮説が真であると言いたいのなら 、今度は反対の仮説(対立仮説)を帰無仮説にするような検定を別に行わなけれ ばなりません。

臨床的重要性

 臨床的重要性 clinical importance とは、個々の患者に及ぼす平均的な効 果に注意することと定義できます。つまり、患者一般に対して臨床的に意味のあ る効果を与えるような差のことです。例えば、血圧がが20mmHg低下することは臨 床的に重要ですが、2mmHgの低下はあまり重要とはいえません。集団のレベルで は公衆衛生的見地から臨床的重要性を考えなければなりません。ここで、注意す ることは、統計的に有意な差があることは直ちに臨床的重要性があるということ ではありません。2つの集団にこのような差があるからといって、臨床的に意味 があるほどの差ではない場合があるからです。また、本当は臨床的重要性がある にもかかわらず標本集団の選択が適切でなかったりすると、統計的有意差が生じ ないこともあります。このように真の有意差があるにもかかわらず、帰無仮説を 棄却しそこなうことを「第2種の過誤」といいます。

   

UPDATE:10/May/10'

© S. HARANO, MD,PhD,MPH